トップ - もくじ - No.41〜60 - 個別の話53


珍品




 休日にフリーマーケットを廻っていて、白く光る不思議な環を見つけた。
 聞けば行き倒れの天使を助けたときにもらったお礼で、スペア用の天使の環だという。

「そんなもの売っていいの?」
「だって使い道がないんだもの。安くするよ」

 言われた金額が思ったよりずいぶん安かったのと、珍しかったのとでその環を買ってみた。ドーナツ型の小さな蛍光灯をもっと細くしたような感じで、紙袋に入れても光が漏れている。インテリアにもよさそうだし、場合によっては電気代の節約にもなりそうだ。

 だがその日の夜になって、問題を発見した。

 この環の光は遮蔽できないのだ。
 布をかけても箱に入れても、夜が更けるにつれ白い光はいよいよ強まり、煌々と辺りを照らし出す。そう、これはまさしく闇を照らして迷える者を導く光、慈悲深き天の御使いの道しるべなのだった。

 これじゃ眩しくて眠れやしない。

 というわけで次の週末に少し遠出して、さる駅前で行われていたフリーマーケットに飛び込みで参加した。古着やがらくたを並べた中に、さりげなく例の環を置く。
 しばらく待っていると、会場をぶらぶらしていた女性が立ち止まった。

「その光ってるの、なに?」
「天使の環だよ。ほしいなら安くするよ……」