トップ - もくじ - No.21〜40 - 個別の話35


月食




 夜に散歩をしていたら、急に猛烈な空腹に襲われた。

 周囲にはコンビニも自販機もなく、家に戻るまで我慢できそうにない。

 ちょうど目の前にあった満月が大福みたいで旨そうだったので、空からもいで食べてしまった。

 以来、食べた月の呪いで俺の身体は満ち欠けするようになった。

 腹が減って減ってしかたないので、食べまくると腹がボールのように膨らんでまん丸に太り、限界まで太るとまた痩せていくのだ。

 そして痩せてがりがりになるとまた食べたくなって――。

「お前、ダイエットとリバウンドの繰り返しは身体に悪いぞ」

 月のせいなんだってば。