片づけをしていたら、がらくたの山の中から古いフロッピーディスクが出てきた。
中身を見ようとFDをパソコンに挿して開いたところ、ひとつだけテキストファイルが表示された。 ファイル名は意味のない半角英数文字の羅列で、もちろん作成した憶えはない。スキャンしてもウィルスでもないようだ。
とりあえず開いてみると、長い文章が表示された。日記か随筆のような雰囲気で、古くなって忘れ去られ、ほこりをかぶったまま打ち捨てられている道具の苦悩が赤裸々に綴られている。
どうやらいつの間にかFDに自我が生まれて、自らの磁気ディスクに思いを刻んでいたらしい。
このままにしておくのも後ろめたい気がするし、正直言ってちょっと気味も悪い。 しばらく考えた末、ネットでフリーメールのアドレスを取得してウェブログページを開設し、テキストをそっくり移動して公開した。データが入っていたFDのほうは、他の古いFD(中身は見ないでおいた)やCDと一緒にまとめて、一応「ありがとうございました」と手を合わせてからゴミに出した。 あとは化けて出ないことを祈るばかりだ。
ちなみに、後日そのFDのブログを覗いたら文章が増えていた。何人か読者もついているようだ。 “彼”の魂はうまくネット側に移ったらしい。
ひょっとしてこの“読者”も、作者に忘れ去られたホームページとかだったりして……。
まあ、ネットの海は広大なんだし。 これくらいのミステリーがあってもいいか。
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