トップ - もくじ - No.201〜220 - 個別の話215


滅殺セヨ




 街を歩いていたら、ふと一枚のポスターが目に留まった。

「飲酒運転撲滅キャンペーンか……」
「どうした?」

 急に立ち止まった俺に気付いて、友人が戻ってきた。
 同じポスターを眺めて言う。

「ふうん。こういうキャンペーンって何するんだろうな」
「飲食店にポスターやチラシを撒いたり、取り締まりを強化したりとか、かなあ」
「なかなか抜本的な対策とは言えないよな」
 友人は腕組みして少し考えてから、ポスターの一箇所を指で示した。

「俺が思うに、ここを一文字変えたらいいんじゃないかな。“滅”を“殺”に」

「飲酒運転……撲殺キャンペーン?」

「そうそう。たった一文字だぜ。簡単なもんだ。“飲酒運転者を許すな! 撲殺せよ!”ってな。で、飲食店に金属バットを配るんだ。俺が総理大臣になったら、やってやるんだけどなあ」
「そうか……」
「まあ、その前に政権を奪取しないとどうしようもないけど、な」
「そりゃ、そうだな……」
 確かに、そこまでやれば効果はあるのかもしれないが。

 ちょっと、心配になった。

 次の選挙では、こいつに票を入れるのをやめておいたほうがいいのだろうか……。