大学を卒業して、郷里の地元企業に就職することになった友人の引っ越しを手伝いに行った。あらかた荷造りを終えたあと、彼は封をしていないダンボールを指差して言った。
「このゲーム、もう遊び終わったからお前にやるよ。捨てるのももったいないし」 「俺、あんましゲームしないんだよなあ。売ればいいじゃん」 「こんなの売れないよ。まあ、お前が捨てる分には構わないからさ。本体も二個あるから、一個やるぜ」
そこまで言われて断るのも申し訳ない。けっきょく小さなダンボールをもらって、そのまま持ち帰った。
家で中身を確認すると、『ファイナンシャルファンタスティカ』『ドラゴンズクエスチョン』『超・輪廻転生』『ケミカルハザード』『ぶよぶよ』『ゲルダの関節』等々、有名なタイトルがいくつもある。 売れないということもなさそうだが……。 せっかくだから、久しぶりに遊んでみるか。本体をテレビに接続して、ゲームを起動してみた。
……なんだこりゃ。 ストーリーが分岐に次ぐ分岐で、自由度が高すぎて次に何をしたらいいかさっぱり判らない。最近のゲームってこんなに難しいのか。 このまま序盤で投げ出すのもしゃくだ。ちょっと悔しいが、攻略本の助けを借りるか。
ところが本屋に行ってみると、その作品の攻略本がいくら探しても見つからない。 「あの、すいません。ファイナンシャルファンタスティカXIIIの攻略本がほしいんですが」 店員を捕まえて訊くと、「えっ?」と聞き返された。 「最新作のファイナンシャルファンタスティカXIIの攻略本でしたら、そちらにありますが……」 「は? じゃあ、ドラゴンズクエスチョン\は?」 「ドラゴンズクエスチョンは[が最後ですよ。お客さん、冗談はやめてください……」
後で友人に電話して追及したが、彼は「うん、だから売れないんだよ」と、のらりくらりととぼけるばかりだ。
ゲームマニア、恐るべし。
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