桜が満開になったので、仲間と一緒に花見に行った。
とは言え、花は口実で主目的は宴会だ。 桜そっちのけで酒を飲んで大騒ぎしていたら、突然「貴様ら、何しに来たんだ。いい加減にしろ!」と桜が怒り出した。 そう言われても、皆もう出来上がっているので、少々のことは気にしない。「まあまあ、そう怒らずにあんたも一杯」と桜に酒を勧める始末。
焼酎や日本酒を根元や幹にかけて、「よっ、大統領!」「いやー、見事な枝ぶりですな」などと、やんややんやとおだてまくる。そのうち、桜も機嫌を直して酔っ払い始めた。 アルコールがまわった桜の花は鮮やかさを増して、まるで紅梅のよう。 あまりの美しさに、途中からは酒を呑むのも忘れて見入ってしまった。
だが酔っ払って寝込んで翌日になると、桜の花は青白くなっていた。 散ってはいないものの咲き方も弱々しく、周囲の木に較べると明らかに元気がない。 さすがにまずいと公園の管理人のところに行って相談すると、管理人はじょうろを差し出した。 「あー、あの木ちょっと弱くてね。水撒いとけば夕方には元に戻るよ」
水道に行ったら、昨夜呑み過ぎた何人かが蛇口に覆いかぶさるようにして水を飲んでいた。 なるほど、人も桜も酔い覚ましには水というわけだ。
水を撒く間、酒や団子は抜きでじっくり花見をすることができた。
今回は桜の作戦勝ちかなあ。 |