トップ - もくじ - No.141〜160 - 個別の話154 


まことの占い師 占い師のまこと




 最近、運が悪いのか、何をしてもぱっとしない。原因を探ってもらおうと、よく当たると評判の占い師のところに行ってみた。

 だが着いてみると、その店構えや雰囲気から、何やら独特の――妖しい匂いがする。
 これは、ひょっとすると……。
 相談内容を伝える前に、念のために訊いてみた。
「当たる方? 当てる方?」
 すると黒ずくめの占い師は、ゆるりと妖しく微笑んだ。

「どちらでも同じでしょう? 聞きたいことは何?」

 危険な感じだ。

 相談するつもりだった総合運についてはやめて、失くしたアクセサリーのことを尋ねることにした。
 占い師は水晶玉を覗き込み、何ごとかぶつぶつ呟いた。しばらくしてから、満足したように頷いて言った。
「机の左側の引き出し」

 家でさっそく調べると、確かに言われた通り引き出しから出てきた。
 何度も確認した場所だったのに。

 やはり。
 彼女は当てる方――“本物”に違いない。

 実は最近、不況で食い詰めた魔術師が、占いで内職する例が増えている――という噂が流れている。
 彼らは占うのは本職ではなく苦手だからと、占いの結果を強引に現実に引き寄せてしまうのだ。
 そのくせ所属する魔術師ギルドに内職がばれることを恐れて、直接望みを叶えるような真似はしない。あくまで占いとして、吉兆織り交ぜたランダムな結果を伝えるのだとか。
 うかつに今年の運勢なぞ尋ねて、「望みなし。最悪」などと言われてしまうと、その通りになりかねない。

 うむ。
 確認しておいて、よかった。