[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
トップ - もくじ - No.141~160 - 個別の話154
最近、運が悪いのか、何をしてもぱっとしない。原因を探ってもらおうと、よく当たると評判の占い師のところに行ってみた。 だが着いてみると、その店構えや雰囲気から、何やら独特の――妖しい匂いがする。 これは、ひょっとすると……。 相談内容を伝える前に、念のために訊いてみた。「当たる方? 当てる方?」 すると黒ずくめの占い師は、ゆるりと妖しく微笑んだ。「どちらでも同じでしょう? 聞きたいことは何?」 危険な感じだ。 相談するつもりだった総合運についてはやめて、失くしたアクセサリーのことを尋ねることにした。 占い師は水晶玉を覗き込み、何ごとかぶつぶつ呟いた。しばらくしてから、満足したように頷いて言った。「机の左側の引き出し」 家でさっそく調べると、確かに言われた通り引き出しから出てきた。 何度も確認した場所だったのに。 やはり。 彼女は当てる方――“本物”に違いない。 実は最近、不況で食い詰めた魔術師が、占いで内職する例が増えている――という噂が流れている。 彼らは占うのは本職ではなく苦手だからと、占いの結果を強引に現実に引き寄せてしまうのだ。 そのくせ所属する魔術師ギルドに内職がばれることを恐れて、直接望みを叶えるような真似はしない。あくまで占いとして、吉兆織り交ぜたランダムな結果を伝えるのだとか。 うかつに今年の運勢なぞ尋ねて、「望みなし。最悪」などと言われてしまうと、その通りになりかねない。 うむ。 確認しておいて、よかった。