ここのところ、どうもおんぼろ中古テレビの調子が悪い。 なんとか映るようにならないかと側面を叩いてみたが、ちっとも映るようにならない。 まあ、リサイクルショップの在庫一掃セールで買った、かなりの年代ものだしなあ。無理もないか。 いやいや、ひょっとしたら叩き具合が足りないのかもしれない。
そう思ってばんばん叩き続けていたら。 突然。
「痛い! いい加減にしろ!」
テレビに切れられた。
「だって映らないんだもん」 文句を言うと、反対に言い返された。 「老体を鞭打って働いてやってるのに、こんな仕打ちを受けたんだぞ! 映ってなんかやるもんか」 どうやら配線や電波状況の問題ではなく、へそを曲げていたらしい。 仕方なく、ほこりを払って綺麗に拭いてやって、せっせとおだてあげることにした。
「いやぁ、見事な光沢ですな。威厳ある佇まいに漂うこの風格。プラズマテレビごとき若造には、この燻し銀の味わいは到底出せますまい……」
「うむ」 やがてテレビは機嫌を直して、映るようになった。
それ以来、映りが悪くなっても叩くのはやめるようにした。 なだめたり褒めたりして、気難しいテレビをなんとか保たせている。
でもこれって傍から見たら、話し相手がいなくてテレビに向かってぶつぶつ話しかけてる、ただの寂しい奴だよな……。
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