トップ - もくじ - No.141〜160 - 個別の話155


うちのテレビ




 ここのところ、どうもおんぼろ中古テレビの調子が悪い。
 なんとか映るようにならないかと側面を叩いてみたが、ちっとも映るようにならない。
 まあ、リサイクルショップの在庫一掃セールで買った、かなりの年代ものだしなあ。無理もないか。
 いやいや、ひょっとしたら叩き具合が足りないのかもしれない。

 そう思ってばんばん叩き続けていたら。
 突然。

「痛い! いい加減にしろ!」

 テレビに切れられた。

「だって映らないんだもん」
 文句を言うと、反対に言い返された。
「老体を鞭打って働いてやってるのに、こんな仕打ちを受けたんだぞ! 映ってなんかやるもんか」
 どうやら配線や電波状況の問題ではなく、へそを曲げていたらしい。
 仕方なく、ほこりを払って綺麗に拭いてやって、せっせとおだてあげることにした。

「いやぁ、見事な光沢ですな。威厳ある佇まいに漂うこの風格。プラズマテレビごとき若造には、この燻し銀の味わいは到底出せますまい……」

「うむ」
 やがてテレビは機嫌を直して、映るようになった。

 それ以来、映りが悪くなっても叩くのはやめるようにした。
 なだめたり褒めたりして、気難しいテレビをなんとか保たせている。

 でもこれって傍から見たら、話し相手がいなくてテレビに向かってぶつぶつ話しかけてる、ただの寂しい奴だよな……。