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ネタ芸人より愛をこめて




 最近人気のお笑いコンビのライブを見に行った。なんでもテレビでは公開できない、禁断のネタの数々が披露されるという噂だ。

 ライブ開始と共に「どうもー!!」とハイテンションに二人が登場した。
 ツッコミ役の片手にはハリセンが握られている。

 今どきハリセンかよ……。
 少々興ざめしたが、そのまま彼らは掴みのネタを始めた。
 やがて順当にボケた相方の頭を、ツッコミ役が横から張り倒す。
「何ゆうとるねん!」

 ずばん!

 その瞬間、ボケ役の頭が吹っ飛んだ。

 床に叩き落とされた頭は、サッカーボールのようにてんてんと転がった。
 首なしのボケ役は、よろよろと歩いていって頭を回収。首に自分の頭を据えてから、「痛いがな〜。何すんねん」とステージに置いてあったパイプで、フルスイングして相方をぶん殴る。

 ごぎんと鈍い音が響いた。

 だが明らかに鉄か何かの金属でできているパイプは、ツッコミ役の頭に沿ってぐにゃりと折れ曲がっただけだった。

「あほか、ボケ」
 間髪入れずにツッコミの放ったボディブローは、相方の腹を貫通して背中に突き抜ける。

 その後も血は一滴も流れないものの、体の一部が取れたり弾け飛んだりする阿鼻叫喚コントが続き、ライブは終了した。
 観客たちは大満足。口々に感想を述べながら会場をぞろぞろと後にする。

「いやあ、あいつらほんと人間離れしてるよな」
「やっぱこういうネタがライブの醍醐味だよな」
「テレビじゃここまではやってくれないもんな」

 ……こいつらもおかしくね?
 あれ、絶対人間じゃないって……。