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遅れて来た真実




 みんなで酒を飲んで馬鹿話に花を咲かせていたら、友人のオグチがやって来て自慢げに言った。

「さっき冥王星人を見たぜ!」

 みんな驚いて「どこで?」「いつ?」「どんな感じ?」と質問攻めにすると、彼は笑って言った。
「嘘だよ。だって今日はエイプリルフールだろ?」
 だが誰かが自分の時計を見てすかさず言った。

「深夜零時五分。残念ながらもう四月二日だよ」

 オグチは衝撃を受けて黙り込んだ。
 彼は真面目な性格で、普段は嘘も冗談も言わないが、年に一度エイプリルフールだけ嘘を言うことを自分に許しているのだ。
 あまりの落ち込みように、みんなで相談して時計を戻して「あいつの時計だけ進んでたみたいだぜ」と慰めた。だが彼は自分の時計をすでに確認しており、首を振っただけだった。

 しばらくして、オグチは旅に出た。

 彼の部屋にあった設計図には、自動車を宇宙船に改造する方法が書かれていた。
 もちろんガレージに彼の車はなかった。
 嘘を本当にするために、冥王星人を見に冥王星に行ったのだろう。

 にしても、冥王星人か。
 宇宙人とか別銀河系人のほうが、まだ多少確率が高かっただろうに。

 まあ見つからなかったら、彼自身が冥王星人になればいいか。