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星に願いを




 今夜は虫眼鏡座流星群。
 写真を撮ってみようと、はりきって出かけた。

 初めての挑戦だが、雑誌やネットで情報を調べて、綿密に計画を織り上げてある。
 まずは場所だ。街の明かりに邪魔されない、山奥の駐車場に陣取った。
 そして虎の子のフィルム一眼レフに、単焦点の明るい広角レンズと高感度フィルムをセットして、レリーズも装着。
 最後にがっちり固定した三脚に、カメラを据えて準備完了!
 あとは星がたくさん流れてくれますように。

 やがて日が落ち、流星群の極大タイムが始まった。

 さっそく調べたとおりにバルブ(長時間露出)設定でシャッターを開いて、撮影を開始する。

 するとそのとたん、星がばりばりと凄い勢いと数で流れ墜ちた。

 どうやら撮られていることに気付いて、サービスしてくれたらしい。
 まるで真昼のような眩しさだ。

 これは凄い写真が撮れたぞ!
 帰ってから期待満々でフィルムを現像に出した。

 そして数日後。

 写真を受け取りに行くと――。

 真っ白だった。
 何も写っていない。

「こ、これ……?」

「マニュアルモードで撮ったんですか? 何を撮ったのか分かりませんけど、明るいところではシャッタースピードを上げてもっと絞らないと」
 店員は憐れむように言って、忠告してくれた。
「初心者のうちは、オートで撮ったほうがいいと思いますよ」
「……」

 星さん……ありがた迷惑でしたよ……。