休日の朝、起きていつものようにメールをチェックしたら、いつまで経っても受信が終わらない。2時間以上かかってやっと終わり、数を見るとなんと「26850通の新着メール」などとなっている。
　外部にアドレスを公開しているわけでもなし、ウィルス定義ファイルは毎日自動で更新されている。ファイアウォールも常駐していて、スパイウェア対策もばっちりだ。

　とすると、俺のアドレスを知っている誰かのパソコンから、情報が漏れたのだろうか。

　メールのタイトルも全部文字化けしていて、内容の手がかりは全くない。うっかり開いて変なウィルスに感染しては目も当てられないしなあ。
　一応、心当たりのある友人たちに警告のメールを送っておくことにした。

　ところが送受信を行うごとに大量のメールが入ってきて、鬱陶しいことこの上ない。とりあえず受信は一括拒否して、メール本文に別のフリーメールのアドレスを指定しておいた。
　しかしこれでよくサーバがパンクしないものだ。

　あっ。
　ひょっとすると、あいつかなあ。

　しばらくして、受信をブロックしたはずの受信トレイに、一通のメールが届いた。
　やっぱりこいつか。

　差出人アドレス Pk鋳ｶvt嘉ﾙ珪ｵsg.De-tata.#galaxy.star$%.com

　宇宙人のPk鋳ｶvt嘉ﾙ珪ｵsg氏（発音不明。全文字化け）だ。
　彼（彼女かもしれない）は、ちょっとした縁で知り合った宇宙人のメル友なのだ。Pk鋳ｶvt嘉ﾙ珪ｵsg氏のメールはサーバを経由しないで、俺のパソコンに直接入ってくる。
　やはり彼（もしくは彼女）のアドレス帳のデータが、外部に漏れてしまったのだという。アンチスパムのソフトでブロックできるから、と、サイトを教えてくれた。

　とりあえずそのサイトにアクセスしたが、宇宙ネットのサイトなので文字化けしていて全くわけが判らない。
　またその旨をメールで送ると、すぐに彼（もしくは彼女）が俺にメールを送るときに使っている翻訳ソフトが圧縮データで送られてきた。
　さっそく解凍してインストールしたが、うまく動作しない。どうやらHPを閲覧するブラウザ（IE6使用）と相性が悪いらしい。

　ほどなく、宇宙ネット用のブラウザソフトが送られてきた。

　こうして、ようやく肝心のサイトにアクセスして、アンチスパム用のプラグラムをダウンロードすることができた。
　ところが今度はメールソフトが対応していない。
　しかたなくPk鋳ｶvt嘉ﾙ珪ｵsg氏に教えられるままにメーラーを変更し、ついでにOSもウィンドウズXPから宇宙最新式の人気OSにすることになった。
　そうなると今度は宇宙ネットのコンピュータウィルスに感染する可能性があるので、セキュリティソフトも宇宙スタンダード仕様にして――。

　やれやれ、これでよしと。

　ようやく整った新しい環境でメールを受信すると、Pk鋳ｶvt嘉ﾙ珪ｵsg氏の名も発音は不明ながら、きちんとした銀河語表記で届くようになった。

　今は迷惑メールもきっちりブロックされ、快適なネット生活を楽しんでいる。宇宙の果ての個人HPまで、ネットサーフィンも自由自在だ。

　でもこれは、秘密の話。