寒くなってきたので、仲間を集めて鍋パーティーを開くことにした。
「どうせだから闇鍋にしよう」
宴会場提供者である俺の提案に従い、当日はそれぞれスープベースや具を持ち寄った。適当に鍋にぶちこんで火にかける。
煮上がった鍋の蓋を開けると、エキセントリックな香りが部屋いっぱいに広がった。色合いも曰く言い難いミステリアスカラーで、なかなかに凄まじい物体だ。 しかしもちろん参加する側も、腹を壊すことを気にするようなメンバーではない。めいめいに原型を留めぬ謎の具を盛り上げ、躊躇することもなく箸をつけた。
「……」 「……旨いな」 「うん、けっこういける」
意外なことに、とろみのあるスープが具材にからみ、味もなんというか異国情緒あふれていて旨い。 みんな貪るように食べ、あっという間に鍋は空になった。 スープの最後の一滴まで飲みつくし、満腹になってから、各自が持ち寄った材料を申告しあった。
野菜担当。「豆もやしと白アスパラ。日の光には一度だって当たったことのない極上品だぞ。あと夜採りの大根とじゃがいも」 魚担当。「宇宙クジラ」 肉担当。「黒竜のもも肉と、視肉(しにく)。旨かったろ」 締めの麺担当。「クラーケンの墨を練り込んだタコスミ麺。深海の味がしたろ?」 スープ担当。「丸コカトリスと牛頭鬼(ごずき)の骨と猪八戒のゲンコツからとった特製スープさ。水だってわざわざ血の池地獄から汲んできたんだぞ」
お前ら、それ、「闇」違い……。
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