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真夜中の戦い




 夜中にふと目を覚ましたら、文房具がケンカしていた。

 カッターとはさみがきちきちと刃を擦り合わせて組み合い、のりとホチキスが接着力を競い、シャープペンシルと鉛筆がノートを舞台に覇権を争うそばで消しゴムと修正液も同様の戦いを繰り広げている。
 実力は伯仲して、なかなか勝負はつきそうにない。

 まあきっと変な夢でも見ているのだろう。
 しばらく眺めていたが、また眠くなって布団にもぐった。

 だが翌朝起きて机を見たら、惨憺たるありさまになっていた。

 カッターとはさみは刃が欠けて使い物にならず、シャーペンの芯は尽き、鉛筆は折れ、ノートは全部真っ黒、のりのチューブと修正液はからっぽ、ちびた消しゴムは修正液でコーティングされ、ホチキスは挟む部分がのりでべったりとくっついてしまっている。

 そういえば最近、文書作成はパソコンばかりで、文房具はほとんど触ってなかったなあ。
 彼らも不満が溜まっていたのかもしれない。