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迫力満点




 特撮マニアの友達に誘われて映画を観に行った。
 だが残念ながら、自分はそれほど特撮モノに興味はない。日頃の不規則な生活と柔らかい座席のせいで、半分ほど過ぎた辺りで猛烈に眠くなってきた。
 せっかく誘ってくれた友達に悪いので寝るまいと努力したが、いつしかついに眠気に負けてしまったらしい。

 気がつくと、なぜか映画の世界の中にいた。

 もちろん夢に違いない。

 ちょうどクライマックスの大戦闘シーンで、宇宙怪獣とヒーローが派手にやり合っていた。
 林立するビルが次々に破壊され、逃げ惑う人々。その中に自分もいた。がれきを避け、こけつまろびつ必死に高台目指して走り続ける。

 ついに小高い丘の上に辿り着いたまさにその時、ヒーローが最終必殺技を放った。
 大爆発を起こし、崩れ落ちる宇宙怪獣の巨体。
 わずかに残ったビルの谷間から光が差し込み、立ち尽くすヒーローを照らし出す。
 そして感動のエンディング――。

 はっと目を覚ますと、本当にエンディングが流れているところだった。

 それにしても……。
 ストーリーが正しいのかはともかく、ある意味凄い臨場感だった。スピーカーの真ん前だったので、音だけで映画を観ちゃったのかなあ。
 その時、隣に座っていた友達が興奮した様子で話しかけてきた。

「なんだよ、お前エキストラで出てたのか! そんなこと一言も教えてくれなかったじゃないか! いいなあ、どうやって出たんだ?」

 あれ?