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トップ - もくじ - No.41~60 - 個別の話60
ある夜、うとうとしていたら夢を見た。ジャングルで動く巨大な食人植物に追われて闇雲に逃げ回っている――という夢だ。 一緒に逃げていた仲間が一人、また一人と喰われていく。 そしてついに自分も触手のようにしなる蔓に絡めとられ、消化液に満たされた花の中に押し込まれた。 中では先に捕まった仲間が、生きながら融かされ、養分を搾り取られていた。だが自分だけはいつまで経っても一向に融ける気配がない。 そう。 人を溶かす強力な酸も、私の肌を侵蝕することはできないのだ。 融かされ、死にゆく仲間が、苦悶の呻きをあげながらこちらを見て茫然と呟く。「お前、人間じゃなかったのか……」 そこではっと目が醒めた。 変な夢だったなあ。締め切りに追われて徹夜続きだったから、あんな怪物に追いかけられる夢を見てしまったに違いない。 さて、仕事をしなければ。 その時、まだ寝ぼけていたせいで、ペン先で指を突いてしまった。傷口から血が滲み、ぷくりと珠を作る。 おっといけない。 深夜の室内を見回したが、もちろん自分以外の者はいなかった。 そして誰にも見られていないことを確認してから、私は鮮やかな青色の血を舐め取った。