最近腹回りの脂肪が気になってきたので、悪魔に相談を持ちかけた。
「せっかくだけど、美容関係は取引が多い上に微調整が難しくてねえ」 だが召喚に応えてやって来た悪魔は、帳面をめくって調べながら言った。まるで企業の経理担当者か何かのようだ。
「魂をもらってもお互いに割に合わないし、こちらの在庫もだぶついているんだよ。簡単な等価交換ならできるけど」 「等価交換?」
「同量での振り替えができる。ええと、皮下脂肪なら……内臓脂肪か、血中コレステロール、尿酸、血糖あたりかな」
「……」 「あと血栓と動脈・静脈瘤もあるけど。どうする?」 言ってから悪魔は牙を剥き出してにやりと嗤い、付け足した。 「たぶん死ぬけどな」
「……やめときます」 「そうだな。ちょっとぐらいの体調不良は、自分の努力か病院で治したほうが安上がりだぞ」 悪魔は頷いて、忠告までしてくれた。そして帰りがけに突然丁寧な口調で「ちなみに精神疾患のほうですと、まだ当方でも取引しております。ご用命の際は、ぜひとも私ネフォニートをご指名くださいませ」と言って、優雅に一礼して魔方陣の闇へと消えた。
魔界もだいぶ合理化してるなあ。 この分だと、テレビで株価や為替の値動きと一緒に魂の交換レートが放送される日も近そうだ。 |