トップ - もくじ - No.41〜20 - 個別の話48


日替わり守護霊




 最近、自分の守護霊と意見が合わない。
 ある日ついに大ゲンカになり、彼は怒って出て行ってしまった。

 どんな役立たずな守護霊でも、いないと何かと不都合だ。仕方ないので霊材派遣会社に頼んで、契約守護霊の派遣を頼んだ。

 初日。
 歩いているとやたらと電信柱や標識の鉄柱にぶつかる。どうやら今日の守護霊は犬らしい。
 二日目。
 体の節々が痛んで何もやる気にならない。番茶が妙に旨い。かなりお年を召した守護霊のようだ。
 三日目。
 なんだか女性にもてる。バーに入ったら、隣にいた女性がドンペリをおごってくれた。ホストのご出身だろうか。
 四日目。
 今日は四方八方がやたらとよく見える。よく見えるのに、動きがのろいものは近寄ってきても認識できない。もしや複眼? 虫も守護霊になれるのか……。
 五日目。
 朝から息苦しくて目が覚めた。口をぱくぱくさせて家中駆け回り、水に潜るとようやく楽になった。もちろん魚介類に違いない。そのまま風呂の中で一日潰れてしまった。
 六日目。
 動きにくい。ずっと這い回って過ごし、ちょっと立ち上がっただけでみんな大喜びだ。赤ん坊? レッサーパンダ? 赤ん坊の霊は怖いから、レッサーくんの方がいいな……。

 そして七日目。
 俺の守護霊がやって来た。

 どうやら出て行ったのはいいが、仕事が見つからずに霊材派遣会社に登録していたらしい。犬やご老人やホストや虫や魚や赤ん坊(!)と同格に扱われ、ひどく落ち込んでいた。

 結局もう一度互いにじっくり話し合い、仲直りすることで同意した。

 仲直りの証として、俺は守護霊に一日一杯の激甘ミルクココアを許可する羽目になった。一方で守護霊は今話題のテーマパーク『ハイテンションスプラッシュワンダーランド』のモーストデンジャラスジェットスカイコースターに乗ることをしぶしぶ承知した(やつは霊のくせに極度の高所恐怖症なのだ)。

 さっそく次の休みの日に出かけて、念願のモースト(中略)コースターに乗った。背中にしがみついた守護霊は、わあわあきゃあきゃあすごい声で喚いた。
 だが降りると、昼ごはんの後にもう一回乗ってもいいと言う。
 なんだ。けっこう楽しそうじゃん。

 激甘ミルクココアも、疲れているときには、それなりに旨いと思えなくもない。

 ま、なんだかんだ言っても、守護霊とたたみは古いほうがいいってことだね。