トップ - もくじ - No.41〜60 - 個別の話41


慈悲




 大雨が三日三晩降り続き、洪水で家が流されそうになってしまった。

 いくら梅雨でも降りすぎだし、降りかたも梅雨らしくない。

 たまたま遊びに来た天使に文句を言ってみた。

「ちょっと、どうにかならないの?」

 天使は厳かに述べた。

『天の御心に逆らってはいけません。これは父なる神の涙雨なのです』

「何かあったの?」

『神様が飼っておられたセキセイインコが、野良猫に食べられてしまったのです。それを悲しまれて、ずっと泣いておられるのです』

 勘弁してよ神様……。