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絶滅危惧種




 久しぶりに学生時代のクラスメートに会ったら、仙人になっていた。
 厳しい修行によって仙人骨が体内に生成され、仙術を操れるようになったのだという。

「しかし仙人って、中国の山奥にいるものだと思っていたよ」
 仙人骨のせいですっかり長くなった頭を見ながら言うと、彼はその長い頭を振って言った。
「いや、僕ももう山に行くよ。仙人になってからこのかた霞を食べて生きてるんだが、どうにも人界は空気が悪くてなあ」

 まあ霞っていったら、つまり空気だもんな。
 大気汚染がこんなところにまで影響を与えているとは。このまま汚染が進んだら、仙人は絶滅してしまったりして。

 それにしても――。
 雲に乗って空の彼方に去る元級友を見送りながら思った。

 彼は昔から「自分にはどうも街の空気が合わない」と言っていた。

 仙人になっても変わらないんだなあ。