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科学のチカラ




 ミゲモスアジャトライカ星の友人から電話が来た。

 彼は何万光年も離れた星に住む異星人で、先日地球に旅行に来た時にたまたま仲良くなったのだ。旅行が終わって母星に戻ったので、世話になった相手に連絡しているのだという。どうやって宇宙からうちの電話にかけてきたのかよく判らないが、彼らの文明は地球より遥かに進んでいるので、まあ何ができても不思議はない。

 彼は大変世話になったので、お礼にミゲモスアジャトライカ星の特産品を送ってくれるという。「好意だけでいいよ」と断ったが、意外に律儀な性格らしく送ると言って譲らない。
 最終的にはこちらが根負けして、「異星のものだから例え石ころでも珍しいので、お金はかけなくていいよ」と伝えて電話を切った。

 それ以来、毎年ミゲモスアジャトライカ星からのお中元とお歳暮が届くようになった。

 中身は岩石、植物、昆虫といった標本やレトルト食品、写真集など、こちらの注文どおりの品々だ。“対地球用滅菌及び病災害要因チェック済み”とも記してあり、本当に律儀な奴である。
 どれを取っても貴重な品々ばかりなのでみんなに自慢したいが、こんなものをうっかり周囲に見られたら大騒ぎになるのは間違いない。
 テレビ局が押しかけてくるぐらいならともかく、研究機関に没収されたりしては彼に申し訳ない。政府や軍なぞが乗り出してきたら、身の危険も起こりうる。

 結局押入れにしまって、時々眺めるだけだ。
 もったいない。

 だがそれより困っていることがある。
 向こうは毎年せっせと送ってくれるのに、こちらからはお返しを送る術がないのだ。

 ミゲモスアジャトライカ星の座標と彼の住所は送り状に書いてあるが、宅急便じゃやっぱり届かないよなあ。