トップ - もくじ - No.181〜200 - 個別の話187


金は天下のまわりもの




 行き倒れの宇宙人を助けたら、宇宙第八銀河の大富豪だった。

 彼はひどく感謝して、お礼に手持ちの宇宙銀行口座をそっくり一つ譲ってくれた。とある星間レースで勝ったときの儲けで、趣味でやっている完全なあぶく銭だから、とのことだ。

 そんなこと言われてもなあ……。
 地球では宇宙マネーを使う術がない。

 知り合いの宇宙人にあげようと思い相談したが、彼も住んでいる星系がまったく違うため(第十六銀河だそうだ)、あまり役に立たないという。
 そうは言っても、公式には異星人とのファーストコンタクトすら行っていないことになっている地球と違って、彼の星は大宇宙協商連合に加盟している。まだ株や投資に使う方法もあるだろう。任せることにして口座を預けた。

 しばらくして、第八銀河のいろいろな星から、メールがじゃんじゃん入ってくるようになった。
「名誉星人にする」
「あなたを褒め称える記念碑を建てた」
「星史にあなたの章を作った」
「銅像を作りたいので、写真を送ってほしい」
 などといったことが、歯の浮くような賛辞の山と共に書き連ねてある。
 もちろん、これっぽっちも身に憶えはない。

 どうやら友人は、口座の金で俺名義の基金を創設して、あちこちに寄付したようだ。

 しかも例の大富豪がそのことを知っていたく感動したとかで、所有する惑星の一つで主催するレースの益金を、あの口座に定期的に振り込むようになった。

 今、第八銀河で最も有名な篤志家と言えば、この俺のことらしい。

 どうよ……。