トップ - もくじ - No.141〜160 - 個別の話158b


ループ 〜never end〜




 ある日、寝ていたら、小人の軍隊に襲われる夢を見た。
 攻め込んできた小人たちは私を取り囲み、待ち針や爪楊枝でちくちくと刺してきた。追い詰められた私は、仕方なく、溜め込んでいた大事なピーナッツを分けてやった――。
 ――ところで目が覚めた。
 まったく、不愉快な夢だ。
 これから大事な仕事だというのに、寝覚めが悪い。
 そして私は鋭く研ぎ上げたバーベキュー用の串を二本腰に差して、決戦の地へと向かった。

 ある日、寝ていたら、小人の軍隊に襲われる夢を見た。
 攻め込んできた小人たちは私を取り囲み、バーベキュー用の串でぶすぶすと刺してきた。追い詰められた私は、仕方なく、溜め込んでいた大事なチョコボールを分けてやった――。
 ――ところで目が覚めた。
 まったく、不愉快な夢だ。
 これから大事な仕事だというのに、寝覚めが悪い。
 そして私は磨き上げたトンカチを二本腰にぶらさげて、決戦の地へと向かった。

 ある日、寝ていたら、小人の軍隊に襲われる夢を見た。
 攻め込んできた小人たちは私を取り囲み、トンカチでぽかぽかと叩いてきた。追い詰められた私は、仕方なく、溜め込んでいた大事なみかんを分けてやった――。
 ――ところで目が覚めた。
 まったく、不愉快な夢だ。
 これから大事な仕事だというのに、寝覚めが悪い。
 そして私は鋭く尖らせた竹槍を二本背負って、決戦の地へと向かった。

 ある日、寝ていたら、小人の軍隊に襲われる夢を見た。
 攻め込んできた小人たちは私を取り囲み、竹槍でぐさぐさと突いてきた。追い詰められた私は、仕方なく、溜め込んでいた大事なぶどう酒を分けてやった――。
 ――ところで目が覚めた。
 まったく、不愉快な夢だ。
 これから大事な仕事だというのに、寝覚めが悪い。
 そして私は頑丈な鉄パイプを二本用意して、決戦の地へと向かった。

 ある日、寝ていたら、小人の軍隊に襲われる夢を見た。
 攻め込んできた小人たちは私を取り囲み、鉄パイプでがんがんと殴りつけてきた。追い詰められた私は、仕方なく、溜め込んでいた大事な老後の資金を分けてやった――。
 ――ところで目が覚めた。

 まったく、不愉快な、夢……。

 そのとき、ふすまが開いて鉄パイプを手にした孫が入ってきた。
「じいちゃーん、こづかいくれよー」
 私は仕方なく、おやつ用に買い置きしておいたバタピーを、袋ごと取って差し出した。
「こないだあげたばかりだから、今日はなし! ほれ、今日はこれをやるから我慢せい」
「ちぇっ。しけてんなあ」
 孫はぶつぶつ言って、チャンバラごっこに使っていたらしい鉄パイプをズボンとベルトの隙間に差した。そしてピーナツを受け取ると、ぽりぽりかじりながら出て行った。

 やれやれ。まったく仕方のない孫だ。

 それにしても変な夢を見たわい。

 このままでは、まったくもって寝覚めが悪い。
 さて、もう一眠りするとしようか……。