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バレンタインデーに捧ぐ破裂するよな恋の歌




 来たるべきバレンタインデーに向けて、先輩に渡すチョコレートを作ることにした。

 ずっと憧れていた本命の相手なのだが、面と向かって告白するのはやはりどうしても恥ずかしい。
 この手作り本命チョコレートに全てを賭けるのだ!
 義理チョコに間違われないためには、私の熱い想いがこもった完璧な本命チョコを作り上げねばならない。
 ひたすら念を込めながら、チョコ、牛乳、ナッツ、酒、ハチミツ、フルーツ、その他もろもろの、とにかくなんらかの効き目のありそうな材料を次々にホーロー鍋に投入。一心不乱にかき混ぜる。

 ところが火にかけてしばらく経ったとき、鍋の中身が突然大きく盛り上がった。

 次の瞬間、大爆発が発生!

 チョコ(のつもりの食物)が飛び散り、キッチンいっぱいに甘ったるい上に妙に刺激的な匂いが充満する。
 おまけに部屋中の床から壁から、どこもしみだらけになってしまった。

 どうやら二人の接着剤にと思って混ぜた、何か粘りけのある材料が表面に弾力のある膜を生成。さらに私がこの手作りチョコに賭ける期待よろしく、中の気泡が膨らみに膨らんで破裂したらしい。

 やっぱり「恋の魔法」ってやつは、強力なくせにうまく行かない……。