トップ - もくじ - No.81〜100 - 個別の話95


トラック妄想




 信号待ちで車を止めたら、対向車線の道路際に「乳牛のにくの森」と大きく書かれたトラックが止まっているのが見えた。

 乳牛だと、ホルスタインあたりか。
 まあ高級な肉ではないけど、酒池肉林でも肉の「林」だ。「森」なんてすごいなあ。

 そのとき、商品の搬入を終えたらしい運転手が店から出てきた。大きなケースには空っぽのガラス瓶がいっぱい入っている。

 あれ?

「おい、信号変わったぞ」
 助手席の友人に言われ、慌ててアクセルを踏み込む。流れる文字を横目で進行方向に追うと、謎が解けた。

 森の――……なんだあ。

「なあ、今日の晩飯、ファミレスじゃなくて焼肉にしないか?」
「えっ、金無いよ」
「バイキングでいいからさ。安い肉をもりもり食べたい気分なんだ……」