日曜なので買物に行って街を歩いていたら、友人に会った。妙にうきうきしており、手にはケーキの箱とリボンの付いた小箱が入った紙袋を持っている。
「なんだよ、夜は彼女とデートか?」 声をかけてからかうと、彼はにこにこしながら言った。
「何言ってんだよ。今日は24日じゃないか。月クリスマス・イブだろ」
「……」
「あれ、知らないのか? 毎月24日が月イブで、25日は月クリスマス」
「ええと……じゃあ、月ハロウィンとか月バレンタインとかもやるのか」 「はあ? 俺はそこまでおめでたくないよ。お前って意外に面白いやつだなあ」
決めつけられて心配になり、デパートに行ってケーキ屋を覗いてみた。だが二割引のデコレーションケーキを山積みにして売っていたりするような、いつもと違う雰囲気は特にない。
やっぱり“意外に面白い奴”はあっちの方だ。よかった。
それにしても、あんなに自信たっぷりに言われたので、自分の中の常識が揺らいでしまった。 現実とは、けっこう不安定なものなのだなあ。
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