トップ - もくじ - No.41〜60 - 個別の話46






 使わなくなった古い物置を片付けようと思い立ち、庭に行った。

 だが近寄ると中から音がする。
 乾いたものを擦り合わせるような音や、何かの鳴き声のような音。
 しばらく使わないうちにネズミかスズメバチの巣でも作られてしまったのだろうか。

 びくびくしながら遠くから棒で取っ手を引っ掛けて開けたら、中にいた小人たちがぎょっとしたように振り向いた。
 そしてこちらと視線が合うと、蜘蛛の子を散らすように庭の植え込みの中に逃げていった。

 中を見ると、小さなテーブルや椅子を配置したダイニングやリビング、ベッドがいくつも並んだ寝室などがあった。物置に置いてあったがらくたや廃材で造り上げた、居心地よさそうな家だ。
 最近、日曜大工で使った板の切れ端がなくなったりするのでおかしいと思っていたが、彼らがうまく利用していたらしい。

 まあスズメバチに巣を作られるよりはよほどましか。
 そのままにしておくことにして、扉を閉めた。