とある閑静な住宅街で惨劇が起きた。
鋭利な刃物でめった切りにされた惨殺死体が、住居の奥の部屋で発見されたのだ。
死因は外傷による失血性ショック死だが、刃物の傷のほかに鈍器による打撲傷や重度の火傷も負っていたことから、犯人は複数で武装していたと見られる。一人暮らしだった住民は、素手で必死に抵抗した形跡はあるものの最後は力尽きて死亡したらしい。 室内は荒らされ、住民が趣味で集めていた宝飾品や骨董品の数々も根こそぎ奪われたという。
警察は計画的・組織的な犯行であるとして特別捜査本部を設置。 犯人探しに全力をあげて取り組むことを記者会見で強調した。
住宅街で起きたこの無残極まる事件に、もちろんマスコミも群がった。 テレビ、新聞、週刊誌から、特ダネ狙いのフリー記者やカメラマンまで、ありとあらゆるメディアの取材陣が小さな町に押しかけた。特にワイドショーは連日あることないこと織り交ぜて事件を報じ、お茶の間を賑わわせた。
そして事件発生から一ヵ月後。
盗品売買の疑いで逮捕された強盗窃盗団が、犯行を自供した。
容疑者は警察の取調べに対し、以下のように供述したという。
「勇者がドラゴンを退治して財宝を奪って何が悪い。こっちだって、やつの牙と爪で反撃されて大怪我したんだ」
かくして、リーダーのマコナン・キンメリアン容疑者(住所不定・自称戦士)をはじめ、容疑者グループのメンバー全員が、犯行は認めたものの無罪を主張。 冒険者ギルド共済組合に弁護人派遣を依頼し、全面的に争う姿勢を示している――。
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