マッドサイエンティストの友人が、新しい殺虫剤を発明したというので見に行ってみた。 殺虫剤だなんて、彼にしては大人しい発明だが……。
彼はその薬剤が入ったスプレー缶を見せてくれて、いつもの血走った目でにやりと笑って言った。
「こいつはな、どんな虫でもいちころで殺れるんだ。うじ虫だの鬱陶しいハエだのうまい汁を吸うダニどももな……」
「……。虫ならいいけど……。殺人は犯罪だぞ」
「そうか? そんな奴らはどっちみち虫みたいなもんだろ?」
まあ、いつものことだ。 それから一時間ほど懇々と諭して、その新殺虫剤(毒)を廃棄する約束をさせた。
今回は納得したようだが、毎度のことながら困った奴だ。 しかしこんな風に彼に説教を続けていたら、いずれ自分も“鬱陶しいハエ”だとか思われてしましいそうだ。気をつけねば……。 |