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トップ - もくじ - No.201~220 - 個別の話207
俺の友人で占い師をしている人物がいる。 だが、彼の占いは当たらないことで有名だ。とにかく、ちっとも、まったく、全然、完璧に、どうあっても、これっぽっちも当たらないのだ。 あるとき、彼と一杯飲んだついでに言ってみた。「お前、全然当たらないんじゃあ、占い師に向いてないんじゃないのか」 すると彼は飲んでいたもっきり酒をカウンターにことんと置き、厳かな調子で言った。「あのな、占いってのは統計学なんだ。当たる占いもあれば、当たらない占いもある。当たる占い師もいれば、その逆も然りだ。全部の占いが当たったら、それは予知になってしまうだろう。占いが占いであるためにも、俺のような存在が重要なのさ。つまり必要悪ってことだ」「だってそれじゃ客がつかなくて食っていけないだろう」 すると彼はつまんでいた鮭の中骨缶の上に割箸をかとんと置き、厳かな調子で言った。「だから言ってるじゃないか。占いってのは統計学なんだ。儲かる占い師もいれば、儲からない占い師もいる。全部の占い師が儲かるなら、世の中の人間全員が占い師になってしまうだろう。世を廻る因果の理としても、俺のような存在が重要なのさ。つまり必要悪ってことだ」 こいつ、きっといつも、こんな調子で客を煙に巻いてるんだろうなあ。 まあお前がそれでいいならいいけど……。 でも一つだけ言わせてくれ。 お前のその「占いは統計学」っていう言葉の使いかたは、間違ってると思うぞ……。