星空の綺麗な冬の夜、バイト帰りに友人と歩いていたら、星が話しかけてきた。
「ちょっときみたち、相談があるんだが。星になってみないかい」
なんでも、オリオン座が最近太ってきてしまって、真ん中のくびれの部分の星がどうしてももう一つ必要になったのだという。 俺は「冗談じゃない」と断ったが、友人は「いいですよ」と承知して、そのまま夜空へと昇っていった。
三日後、バイトに行ったら店長に訊かれた。 「昨日、佐々木が来なかったんだけど、お前何か知らないか」
「あいつなら、星になりましたけど」
「はあ? 死んだのか?」
「いや、だから空に浮かぶお星さまになるって言って……」
もちろん俺の言い分は誰にも信じてもらえなかった。
その後も佐々木はバイトには出てこず、二度とアパートにも戻らなかった。しばらくは家出か拉致かと騒がれたが、やがてなんとなくうやむやになって忘れ去られていった。
だが今でも俺は、以前より少し太めのオリオン座を見上げるたびに、彼のことを思い出すのである。
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