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天災的人災




 青空を見上げていたら、綻びを見つけた。

 放っておいたら裂け目が広がって、雲がもれてきてしまう。

 急いで空色の糸を探して縫い合わせた。
 ちょっとよれて色むらができたが、まあ言われなければ気付くまい。雲ひとつない晴天で、洗濯物を干すのにちょうどいい天気だ。
 いいことをした。

 それから一週間晴れが続き、自分のしたことをすっかり忘れたある昼。

 ぷつり、と糸の切れるような音がした。

 颶風が疾り、一天にわかに掻き曇り――。

 数分と経たず、轟雷と共に雨が降り始めた。バケツをひっくり返したような凄まじい勢いの土砂降りだ。
 次の一週間も雨は降り続き、水害で各地に甚大な被害が記録された。

 どうやら見なくてよいものを見て、しなくてよいことをしてしまったようだ。

 かくも自然は偉大なり。
 広大無辺なる天の摂理に逆らってはいけない。